身体のつくりと水分の出納について
私たち人間の身体のうち、成人では約60%が水分で出来ていると言われています。尿や便といった排泄物、呼気に含まれる水分、皮膚から蒸発する水分などで体内の水分量は失われていきます。その失われる水分を補って、一定の体内水分量を保つことが生命の保持には必要です。水分の補われ方は、代謝水(細胞のエネルギー代謝によって体内に新たに生成される水)の他、食品に含まれる水分、飲料水によるものです。
身体の水分が失われると、身体にはどのような影響が出るでしょうか。身体の水分はたった2%失われるだけで運動能力低下の恐れがあります。また、5%の水分が失われると熱中症や頭痛などの症状を発症し、20%の水分が失われると死に至ります。仮に50kgの体重の成人だと、2%の水分量は1,000mlです。睡眠するだけでも約350mlの水分量が失われますので、運動する人であればいかに意識的に水分補給をするかがパフォーマンスを左右するのか、お分かりいただけると思います。運動中「のどが渇いた」と思ったときには、すでにパフォーマンス低下のリスクがあります。
現状把握をしよう
1日に必要な水分量を計算しよう
1日にどのくらいの水分量をとる必要があるのでしょうか。以下の計算式でおおよその目安が分かります。
<計算式>
体重(kg)×年齢別必要水分量(ml/kg/日)
(例)30歳60kg → 60(kg)×35(ml/kg/日)=2,100ml
運動中の水分摂取の目安を知ろう
①運動開始20~40分前:200ml~500ml
②運動中;200ml(15分毎)
(例)2時間の練習:運動開始前(400ml)+運動中(1,600ml/2時間)=2,000ml
尿の色を見よう
水分補給の状態を判断するのに最も手軽な方法は尿の色を見ることです。「明るい麦わら」色~淡い黄色の尿であれば十分な水分補給が出来ている状態ですが、濃い色の尿であれば、水分不足や脱水状態である可能性があります。
水分補給のポイント
水分補給とはいえ、「水」を飲めばいいというわけではありません。なぜなら、汗にはナトリウムなどの電解質やマグネシウムなどのミネラルが含まれているからです。一度に大量の水を飲むことは、かえって体内の電解質のバランスを崩して体調不良を起こす原因になります。本当の水分補給とは、胃を通過することではなく、「腸で水分が吸収され、血管に入ること」です。そのためには塩分と糖分の濃度がポイントとなります。
日本体育協会では、1時間以上の運動をする場合は「エネルギー補給」の点も考慮して4~8%の糖質を含む飲料を飲むことを推奨しています。1時間に30~60gの糖質を摂取することで疲労回復の効果がアップします。
また、「運動前・中・後」で、濃度を使い分けることで効果的に水分補給をすることができます。浸透圧により、アイソトニック飲料とハイポトニック飲料に分類できます。浸透圧が体液と同じアイソトニック飲料は、安静時に吸収が速く、糖質が多いため長時間の運動のエネルギー源になるため、練習前後の補給に向いています。それに対して、浸透圧が体液より低いハイポトニック飲料は、発汗で体液が薄くなっている時に吸収が速く、発汗時の水分補給を優先させたい練習中の補給に向いています。上手に使い分けしましょう。
ラクロス競技における水分補給のポイント
ラクロスというスポーツは、試合時間中フィールドを走り抜ける有酸素運動とゴールに向かって全力で走るような無酸素運動が繰り返される、非常に強度が高いスポーツです。また、男子ラクロスやゴーリーは防具をつけていることで熱を逃がしにくくなっています。そのような競技性を鑑みると、熱中症および脱水症状になるリスクが他競技より高いといえます。人工芝で観客席に囲まれているフィールドでの真夏の試合では特にそう感じますよね。練習においても日陰の少ない場所で、アフターも含めて長時間練習している方が多いのではないでしょうか。
パフォーマンスや集中力が低下し、怪我につながらないよう、こまめな水分補給を心掛けましょう。また興奮状態にある試合時は特に水分補給が疎かになりやすいので意識的に飲むようにしてください。マネージャーの方は冷たい水とスポーツドリンクを用意した状態で練習・試合をするように環境を整えてみましょう。
▶︎▶︎この記事を書いた人
【名前】アスラクごはん
【所属メンバー】河合 由美、谷北 沙尚里、金井 麻由美(管理栄養士)、田中 千晶(管理栄養士)