ラクロッサーに知って欲しい栄養のこと

1.パフォーマンスを高めるための栄養管理とは?

自分自身のパフォーマンスを高めたい、サポートする選手のパフォーマンスを高めたい、皆さんそれぞれ目的は違うかと思いますが、パフォーマンスを高めるためにもちろん日々トレーニングを行なっていますよね。では日々の栄養管理は行なっていますか?トップアスリートはトレーニングと同じくらい栄養管理を徹底しています。トレーニングをする目的として持久力を上げたい、筋力アップを目指したいなどがあると思いますが、そのトレーニングを行うためにはエネルギーが必要であり、エネルギーを生み出すための食事が必要になってきます。また、筋肉量を増やすためにも材料となる栄養が必要であり、身体の疲労を回復させるためにも休息に加えて必要な栄養を摂取することが重要になってきます。
パフォーマンスを上げるために、目的に合わせてトレーニングの種類を「選択」し、トレーニングの強度や時間といった「量」を調整することを行なっているように、栄養の種類を「選択」し、摂取する「量」を調整することができると、更なるパフォーマンス向上に繋がるはずです。

2.自分に必要な食事の選択ができていますか?

皆さんは自分の食事あるいはサポートする選手の食事を考える時にどのような事に気をつけていますか?「間食にナッツを食べている」「たんぱく質を多く摂取するように伝えている」など様々な事があるかと思いますが、なぜナッツがパフォーマンス向上に良いのでしょうか?ビタミンEが豊富だから?良い油が含まれているから?このような回答は思い浮かぶかと思いますが、それはナッツに含まれる栄養素、つまり「食品の栄養学」であり、それが食べた人の身体にどのような影響を与えるのかまで理解する事が重要です。それを「身体の栄養学」と言います。ナッツに多く含まれる脂質は、長時間の運動中に身体がエネルギー不足に陥った際に、エネルギー源となり持久力のサポートをしてくれます。この「食品の栄養学」と「身体の栄養学」を掛け合わせて、自分にとって必要な栄養や食品を選択する事が最も重要なのです。この2つを掛け合わせられると、なぜナッツを食べる事がパフォーマンス向上に良いのでしょうか?という質問に対して、「今から試合があって体内の貯蔵エネルギーの不足が想定されるから、試合2〜3時間前に脂質の多いナッツを食べる事が有効である」といった回答もできるようになりますし、試合の日、練習の日、オフの日など状況によって食べるものを選択する事が可能となります。

3.運動量が減っている中で、体脂肪を増やさないためには?

最近は以前よりも運動量が減っているアスリートは多いかと思います。そのような状況で体脂肪が増えていませんか?皆さん自分の体脂肪率は定期的に測定されていますか?まずはそこが一番のスタートですので、普段測っていない人はこれから是非測定するような環境・習慣づくりを行なってください。出来るだけ毎日測る事、測定する時間帯は朝一番の朝食前が安定して測定できます。(朝が難しい場合は出来るだけ条件を揃えましょう。食前の時と食後の時で比較しても参考にしづらいためです)
自分の身体の状態を把握した上で、この期間に体脂肪を増やさないためにどうしたら良いかを考えていきましょう。「体脂肪を増やしたくない(落としたい)から、糖質を制限してたんぱく質を多めに摂りましょう」このような声を時々耳にします。これも「身体の栄養学」から考えてみましょう。まず、体脂肪が増えるのはなぜでしょうか?体脂肪の働きは知っていますか?体脂肪とは脂肪細胞の集まりのことで、脂肪細胞は8割が脂質からできています。つまり油ですね。この脂肪細胞に入ってくる栄養は、過剰に摂取した糖質と脂質です。どちらも身体を動かすエネルギーになるのですが、エネルギーとして消費される以上に摂取すると使われず、体脂肪という倉庫に貯蓄されるのです。いつの日か身体が何かの原因でエネルギー不足に陥った時にこの貯蓄された倉庫の脂質を出してきてエネルギーとして利用する事ができます。私たち人の身体は生命の維持を一番に考えて栄養を効率よく利用したり蓄積するように出来ているのです。
そして「食品の栄養学」から考えると体脂肪に多く含まれる「脂質」は1gあたり9kcalと、炭水化物いわゆる「糖質」の1gあたり4kcalと比較すると高カロリーな栄養素なのです。糖質も脂質も構成する元素は同じですが、脂質の方が構造が密集しておりエネルギーを小さな体積で保存できる事から、体脂肪に入ってきた糖質も脂質も、脂質としてぎゅっと密集して効率よく貯蓄されているのです。
このように「身体の栄養学」と「食品の栄養学」を掛け合わせると、体脂肪が増える理由は、糖質や脂質を過剰摂取する事で脂肪細胞に吸収され、身体がエネルギー不足になった時にエネルギー源として利用する事ができるように備えて、効率よく蓄積をするから。という事が分かりましたね。つまり、体脂肪を増やさないようにするためには、身体を動かすエネルギー源である糖質と脂質の摂取量が、身体が消費するエネルギー量を超えないようにする事が必要になってきます。

4.自分に必要な食事量とは?

では自分に必要な量ってどれくらいなんだろうか?という事を考えてみましょう。これを考える上でのポイントとしては、「体格」と「運動量」の2つがあります。身長180cmの男子選手と身長150センチの女子選手を考えた時に、同じ食事量で良いのでしょうか?また、同じ選手が軽く1時間練習を行う日と、1日中練習を行う日では同じ食事量で良いのでしょうか?もちろん、NOですよね。(これはイメージ湧きますね)
では、どれくらい食べたら良いのかを考える時に、「基礎代謝」と「活動代謝」を考えていきます。「基礎代謝」とは1日中24時間何もせず横たわっている時に消費されるエネルギー量のことで、脳や筋肉や肝臓といった身体の各部位で消費されています。この基礎代謝は年代と体重によって概ね計算が可能です。男性では約1600kcal程度、女性では1100kcal程度となっており、男女ではやはり大きな差がある事が分かりますね。「活動代謝」とは身体を動かした事による消費エネルギー量のことです。この活動代謝は運動強度と運動時間と体重で概ね計算が可能です。「基礎代謝」と「活動代謝」の合計が1日の消費エネルギー量目安として考える事ができるので、そのエネルギー量と同じくらいのエネルギー量が摂取できる食事量を考えていく事が必要になってきます。大切なのは、あくまでも目安量であるという事で、正確なエネルギー消費量も摂取するエネルギー量も1kcal単位では把握する事が難しいため、大きく外さないような食事量を心がける事が大切です。1kcalレベルで管理しようとすると栄養管理を長く続ける事が負担になってしまいますので、「ざっくり」でOKという事で、2000kcalしか消費していないのに3000kcal摂取しているといった事がないようにしていきましょう。また、消費エネルギーと摂取エネルギーのバランスが崩れてしまう日も時々あるかと思いますが、だから翌日極端に摂取エネルギーを抑えようという事をするのではなく、翌日も同じようにバランスを崩さないように、いつも以上に意識した食事を摂取する事が大切です。問題なのは毎日気づかずエネルギーバランスが崩れた食事を摂取している事なのです。

5.まとめ

栄養管理というと難しく感じやすい方も多いかと思いますが、大切なのは自分の身体の状態を知り、こうなりたいという目標に対し必要なトレーニングを考えるように、必要な栄養を考える事が大切です。身体の中は目に見えないので食べたものがどう変わっていくのかをイメージする事ができると、自分の食事はもちろん、チームメイトの食事に関しても何が最適なのかを考えて臨機に対応する事ができるようになっていくはずです。栄養の知識は一生物ですので、原理原則を知っておくと将来にわたって食事管理を行っていく事もでき、健康管理という面でも役に立つ財産になります。

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