1.ラクロスに必要なフィットネス能力とその疑問
ラクロスというスポーツにおいてはクロスを用いたり、選手とぶつかったりなど、テクニック的な要素に加えてフィジカル的な要素も非常に重要になって来ます。ゆえにパフォーマンスアップには、そのフィジカル的な要素を向上させるのは必要不可欠です。
では、具体的にどのようなフィジカル的な要素を向上させたら良いのか。
いわゆる敏捷性?それとも瞬発力?どれも大事かと思いますが、どれが1番大事なのかは人それぞれありますし、ポジション毎にも分かれるので、答えはわかりません。ただ、ラクロスにおいては、敏捷性や瞬発力といった能力が大事であると私は考えます。
このようなテクニック的な要素ではなく、フィジカル的な要素の1つ1つを「フィットネス能力」と言います。
もちろんラクロスにおいては、相手の動きを予測する、相手と接触するなど、テクニックとフィットネスの両方を合わせ持つプレーが多く存在しますが、よりわかりやすく数値がするために、ここではあえて分けて考えていきます。
さて、そこで挙がってくるのは、「ラクロス上手い人ってどのくらいのフィットネス能力があるんだろう?」と言う疑問や、「他の大学の人ってどれくらいのフィットネス能力があるんだろう?」という疑問です。
この疑問を解決することで、自分のフィットネス能力と他の人がどれだけ差があるのか、他大学とどれだけ差が離れているのか、もっと言えば、海外とはどれくらい差があるのかを知ることができ、更には目標にも繋がります。
これを解決するにはデータが必要になります。つまり、他の選手達と同じようなフィットネステストを実施し、その結果を「数値化」することが必要になります。日本のラクロスの論文を探してみると、論文が少なく、日本のラクロッサーがどれくらいのフィットネス能力があるのかというのが、未だよくわかっておりません。(近々発表があるかも知れませんが…)
そこで海外の論文を探してみると、そこそこな数が男子も女子も発表されています。そして、2018年NCAA DIVISION1に所属する選手41名の身体機能を計測した論文が発表されました。海外選手(20歳前後)の一部リーグに所属する選手のフィットネス能力はいったいどのような数値なのでしょうか。
2.NCAA所属選手のフィットネス能力は?
この論文はおそらくホフストラ大学の男子学生41名を対象に、身体機能を評価したものだと考えます。
評価項目は
・握力
・フィールド種目(20ヤード走、40ヤード走、プロアジリティ、3コーンドリル、垂直跳び、1.5マイル走)
・ウェイト種目(ベンチプレス、スクワット、クリーン)
を評価しています。結果は下記図に示します。
なかなかの高数値ですね。
フィールド種目、ウェイト種目もかなり高いものですし、握力は80キロを超えています。
さて、これを某日本の大学生1部リーグ所属の選手のデータの平均値と比較してみます。
3.日本の大学生選手との比較
論文で評価している項目と共通項目を比較します。
こうしてみても大きな「差」があることがわかります。体格、スピード、パワーにおいて、統計的にも差の意味が大きい数字です。
この差のみをまとめると…
ベンチプレス、スクワットの体重比では勝っているのですが、それでもシンプルなスピード、パワーなどのフィットネス能力においては、かなり米国学生の方が優れています。
4.まとめ
NCAAの選手は非常にフィジカル面でも優れていることが、この論文からもわかりました。
その中でも握力に関しては群を抜いて優れています。プロアジリティなどのフィールド種目は大学生トップレベルの水準です。日本の学生はウェイト種目では体重比などを考えると少し優っているところがあります。そのトレーニングを意図的に鍛えているなど、各大学のトレーニングの選択に差があるかもしれませんし、NCAAの選手たちもスクワットを選択的にトレーニングしていない可能性もあります。
なぜこのような数値の違いが出たのか、また他の大学を含めて比較をした際には、どのような違いが出るのかは今後さらに検証する必要があります。日本でも、NCAAのような論文が今後発表されていくことを楽しみにしています。
▶︎▶︎この記事を書いた人
【名前】樋口雄哉 Instagram
【現在の職業】理学療法士
【所属チーム】Stealers
【所有資格】
・理学療法士
・心臓リハビリテーション指導士
・MAT(muscle activation Technic)講習修了
【経歴】
・2018〜Stealers